イアンさんは株式の分析を25年以上行なってきましたが、このような事例は見たことがなかったと振り返ります。
しかし、このように不確実なときほど大きな投資チャンスがある。
その鍵が「Xファクター」に注目するということです。
テスラは新しい技術の開発に巨額の投資をしてきました。そして、自動車業界全体でも10年で3,000億ドルの投資計画を発表していたのです。
そこでイアンさんはEVのトレンドと同社が持つXファクターが株価を大きく上昇させると考えました。
では、同社のXファクターは何だったのでしょうか?
1つはバッテリー問題を解決するような技術です。
2019年4月にはモデルSとモデルXのアップグレードを発表。走行距離や充電機能を向上させました。さらに低価格帯のモデル3も量産されて、それまでで最高の四半期販売を記録していたのです。
「大量に生産されることになれば、製造コストも安くなる」
これはライトの法則と呼ばれますが、これが進めば進むほど、EVがガソリン車などよりも低コストで生産できるようになります。
イアンさんはこれが近い将来には実現すると考えていました。次の車を買う前にEVがガソリン車 よりも安くなっているということです。
これは大きなトレンドになります。その後10年間で、世界のEV保有台数は2018年の生産台数の100倍になるという予想もされていました。
そのリーダーとなるのは間違いなくテスラだと考えたのです。
そして注目していた技術はもう1つ。自動運転ソフトウェアです。
当時、自動運転は「本当に起こるのかどうか」ではなく、「いつ起こるのか」というところまで技術が進んでいました。
これが2020年代最大のトレンドになると考え、その最前線の技術を持つのがテスラだと分析したのです。
というのも、自動運転といえば、Googleの自動運転車開発企業ウェイモが有名で、自動運転の問題を最初に解決する企業かもしれないと考えられていました。
しかし、当時は実現のために自動運転機能のさらなるトレーニングをしなければいけませんでした。データをもっと集めるために実際に道路を走らせる必要があったんです。
テスラはすでにそれを実現していました。低価格のEVと自動運転。これによってテスラは圧倒的な優位性があったということです。
結果、不安材料があったにも関わらず、量産型の「モデル3」の売上によって業績は安定し始め、赤字続きだった通期の利益は初の黒字化。
自動運転技術も大きく進歩し、2020年に完全自動運転機能「FSD」のベータ版を一部ユーザーに提供開始したのです。
このようなことがあって、株価も急上昇しました。